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Channel: さまざまな動物を守る | 動物実験の廃止を求める会(JAVA)
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<外来生物法改正>今後適用されるミシシッピアカミミガメの規制―環境省に政令について働きかけ―

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法改正によるアカミミガメの規制とは

2022年5月11日、改正「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(以下「外来生物法」)が可決・成立し、ミシシッピアカミミガメ(以下「アカミミガメ」)は今後「特定外来生物」に指定されることになりました。
「特定外来生物」には、156種類の動植物が指定されています(2021年8月1日現在)。指定された生物は、主務大臣の許可を得た場合などを除き、次の行為が原則禁止されます。

  • 飼養・栽培
  • 保管・運搬
  • 輸入
  • 譲渡し・譲受け、引渡し・引取り ※販売は「譲渡し」に該当
  • 放出

しかし、アカミミガメはすでに非常に多くの数が飼育されていて(環境省推計:約110万世帯/約160万匹)、上記の規制を適用した場合、「飼養許可を取るのが面倒」等の理由から屋外に大量に放出され、かえって生態系等への被害が拡大するおそれがあるとして、特例措置が取られることとなりました。
その「特例」とは、「当分の間、一部の規制を適用しない」というものです。これにより、「当分の間」は、アカミミガメの「個人の販売目的でない飼育」や「個人間の無償譲渡」等は認められ、「販売」「輸入」「放出」は禁止されることになります(2023年春~夏施行予定)。
ちなみに、アメリカザリガニもアカミミガメと同様の状況であることから、特例が適用されます。

※環境省は「当分の間」について、「現時点では、具体的な期間は想定していない。飼育者に対してアンケート調査等を行いながら、規制等の内容に関する理解の状況をよく見ながら、規制を段階的に強化していくタイミングを判断していきたい」と述べている。(2022年5月10日 参議院環境委員会)

環境省の野生生物課長に面会し、政令について要望

今回の法改正によって、JAVAが環境省に働きかけてきたアカミミガメの輸入、販売の禁止が適用されること、販売・頒布を目的としない飼育の禁止と譲渡しの禁止は適用されないことについて、JAVAは大きな前進と歓迎しています。しかし、同じくJAVAが求めてきた「繁殖の禁止」と「殺処分方法の改善」等については残念ながら盛り込まれませんでした 。

アカミミガメの特例に関しては、今年10月頃に公布予定の政令において具体的に定められることから、JAVAとこの問題に連携して取り組んでいるPEACEは、6月14日、環境省自然環境局野生生物課の則久課長(当時)と面会の上、「外来生物法施行令におけるミシシッピアカミミガメの取扱いに関する特例についての要望書」を提出しました。そして、7月29日、同課外来生物対策室より回答がありました。

JAVAの要望と環境省からの回答

※要望と回答の文面は会報用に編集

<要望1>
「交換」も「販売」に当たるとし、禁止してください

野生生物課によると、外来生物法では「交換は販売に当たらない」との説明である。しかし、動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護法」)では、動物と動物の等価交換のみを行う事業者であっても販売業に当たる運用がされており、つまり、「交換」は「販売」に当たるとしている。法律によって「販売」の定義・範疇が異なっている、しかも同じ環境省所管の動物に関する法律で異なっていることは、法の施行・運用において混乱を招きかねず、統一すべき。 「交換」も外来生物法で禁じている譲渡しと同様に、動物自体や所有権が移る行為であることからも、「交換」を「販売」に当たるとすることが道理にかなっている。金銭の授受が行われていないことを名目にして、実質売買と変わらない取引が継続する可能性がある。

【環境省からの回答】

  • 対価を得て他人にアカミミガメの財産権を移転する場合は販売に当たると考えている。このため、例えば金銭的価値に換算できるような対価を得ることを条件としてアカミミガメの譲渡しをしたと認められる場合は、金銭のやりとりがなくとも販売に当たると考えている。
  • なお、動物愛護管理室からは、動物愛護法においても、「交換」がただちに「販売」に当たるという運用はしていないと聞いている。

<要望2>
アカミミガメのように附則で特例が適用される特定外来生物は、別の呼称にしてください(例:第二種特定外来生物)

同じ呼称だと、「アカミミガメも法改正によって飼育に許可が必要になった」といった誤解をされ、遺棄が増えるなどの恐れがある。そもそも、規制が異なるのに同じ呼称は混乱を招く。 動物愛護法においても、同じ動物取扱業でも規制の違いによって、「第一種」「第二種」と呼称を分けている。従来の特定外来生物とは規制内容が異なることがわかりやすい呼称をつけてもらいたい。

【環境省からの回答】

  • 外来生物法附則第5条第1項に基づき、一部の規制を適用除外とする特定外来生物については、規制の内容を正確に御理解いただくことが重要と考えている。
  • 分かりやすい呼称の必要性については、各方面からご指摘いただいているので、当該特定外来生物の通称を設けることも含め、規制の正確な内容を広く周知するための方策の検討を進めている。

<要望3>
アカミミガメの飼育者に殺処分を提案しないでください

飼いきれない」という飼い主に対して、環境省は、殺す方法を周知徹底するとしている(2022年4月22日 衆議院環境委員会での答弁より)。動物愛護法において、「終生飼養に努めること」としており、国が飼育動物の殺処分を後押しするのは不適切である。
また、JAVAが昨年9月に提出した要望書で指摘したとおり、環境省が「アカミミガメ防除の手引き」や「アカミミガメ防除マニュアル」で殺処分方法として示している冷凍殺(冷凍庫による低温殺)は、大変残酷な方法であるのは勿論のこと、OIE(国際獣疫事務局)の動物福祉規約「皮、肉、その他の製品のための爬虫類の殺害」や動物愛護法第40条に反する方法であり、行うべきではない。
そもそも、動物を致死させる行為は獣医療行為であり、極めて専門的な知識と技術を要することから、獣医師のみが行う資格があることになる。素人の国民に殺処分をさせることは決して許されることではない。

【環境省からの回答】

  • アカミミガメを現在飼育している方に対しては、
    ・今回の改正外来生物法において、一般の方が行う、販売・頒布等をする目的以外の目的による飼養等については、規制をかけることは想定していないこと
    ・終生飼養をしていただきたいこと
    について、広く周知し、御理解いただくことが必要と考えている。
  • その上で、どうしても飼育を継続できない場合において、殺処分以外の方法がとれるよう、他に飼育いただける方を見つけていただき、無償で譲渡することは規制しない方向で検討しているので、その点についても、周知を図りたいと考えている。
  • 一方で、他に飼育いただける方を見つけることが難しいなどの場合においては、殺処分を行っていただく必要が出てくる場合があることについても、無責任に新たに飼育を開始する方を生まないという観点から、お伝えしていく必要があると考えている。
  • 終生飼養をしていただくことが原則という点を中心として、これらの周知を行っていきたいと考えている。
  • 殺処分の方法については、貴団体からの要望書への回答でお伝えしたとおり、御指摘のOIEが作成した産業におけるは虫類の殺処分についての福祉綱領も含め、多方面の最新の知見を参考にしながら、捕獲個体にできる限り苦痛を与えないことをはじめ、残留性のある毒物は用いないこと、作業者の安全が確保されること、また心理的負担が少ないことにも留意しながら、引き続き、それぞれの種に適したよりよい方法を検討する努力を続けていく。

<要望4>
アカミミガメの「繁殖」も禁止してください

改正法にアカミミガメの「繁殖禁止」が盛り込まれなかったことは、非常に残念である。環境省は5月10日の参議院環境委員会において、繁殖を禁止しない理由として、「繁殖して増やすことは必ずしもは簡単ではない。繁殖を規制するために飼育方法に制限をかけることでかえって遺棄が誘発される可能性があるのではないかというふうに考えて、現時点では法律に基づき禁止することまでは考えていない」と答弁された。しかしながら、一部マニアには繁殖を行う者もあり、飼育者間での譲渡が許されている場合、繁殖した個体を無償譲渡する形で新たな飼育が広がる可能性がある。新たな飼育個体を増やさないという観点から、繁殖についても禁止する必要があると考える。
飼育個体の放出・遺棄は外来生物法ならびに動物愛護法において、禁じられていることから、その啓発や取り締まりでもって防ぐべきであり、放出・遺棄を恐れて繁殖を許容することはアカミミガメの数を減らすことを妨げてしまう。 今回の法改正では「繁殖の禁止」は実現しなかったが、今後、この実現に向けて検討を進めていただくことを求める。

【環境省からの回答】

  • 繁殖の制限など、飼育方法の規制を広く一般の方を対象に行うことで、飼育自体が禁止されると誤解したり、規制内容が厳しいことから飼育の継続が困難と判断したりすること等の理由により、かえって野外に放してしまう行為が増えてしまうことが懸念される。
  • 今回のアカミミガメ等を想定した規制の枠組みについては、野外への「放出」という行為を最小限とすることを最優先として検討を進めており、アカミミガメ等への規制を最初に導入する現段階では、広く一般の方も含めた飼育方法の制限につながる繁殖行為については、規制をかけない方向で検討している。
  • 一方で、意図しない形での繁殖がおきないための飼育の際の注意点などの普及啓発に取り組み、安易な繁殖がおきないように促していきたいと考えている。
  • その上で、飼育者に対するアンケート調査等を行い、規制内容に関する理解の状況を見ながら、規制を段階的に強化するタイミングを判断していく。

環境省の回答は、大きな成果ではないが一歩前進

<要望1>への環境省の回答にある「金銭的価値に換算できるような対価を得ることを条件」とは、例えばアルビノのアカミミガメなど高額で販売されているような珍しい個体が交換に用いられる場合などが考えられるでしょう。すべての「交換」が「販売」に当たるわけではないとしながらも、当たる場合もあるという見解が引き出せたのは意義があります。

呼称についての<要望2>に対しても「通称を設けることも含め、検討を進めている」と前向きな回答を得ることができました。

<要望3>は、その回答でもって、「環境省は決して殺処分を勧めるわけではない」という念押しができたと思います。冷凍殺の問題は、これまでも繰り返し指摘し、麻酔薬を用いた方法への改善を要望してきました。駆除そのものをなくしたいのがJAVAの本心ですが、環境省と農水省により駆除が推進されている現状において、今、私たちができる最大限のことは、できるだけ苦痛の少ない方法に改善することだからです。環境省の回答はこれまでと変わらない感じですが、OIEのガイドラインを参考にすると私たちへの回答に記されたのはこれが初めてであり、一歩前進でしょう。
一方、「残留性のある毒物は用いないこと」と、これまでは述べていなかった主張もしてきました。しかし、私たちが求めているように獣医師によって行われれば、そして、薬剤で殺処分した個体を野外に放置しなければ、そんなことは起こり得ないはずです。

<要望4>の繁殖の禁止に関しても、法改正の前からJAVAは要望してきたことです。環境省の回答も相変わらずという感じですが、「意図しない繁殖、安易な繁殖がおきないように促していきたい」としており、今後の実現に期待したいと思います。

このように、アカミミガメの犠牲を少しでも増やさないよう、できる限りJAVAの求める形に近い規制が実現するように根気よく働きかけを続けています。8月2日には、「特定外来生物被害防止基本方針(変更案)」に関する意見(パブリックコメント)を提出しました。法改正の機会はめったにありませんので、来年の改正法の全面施行まで力を尽くしていきます。

※2022年8月末現在の情報です。

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